今回の調査では、20~60代の1,085人を対象に、コロナによってキャンプに行く回数や、キャンプ用品の購買額・頻度がどのように変わったのか調査した結果を公開いたします。
2020〜2022年のコロナ禍の3年間でキャンプの人気は高まり、第2次キャンプブームと言われました。スノーピーク社などアウトドアメーカーの売上は右肩上がり、新規のガレージブランドも続々と立ち上がりました。
しかし、2023年3月末に、SNS でリサイクルショップ店員の話として、「巣ごもり需要が終わりキャンプ用品を売りに来る人がかなり多い」という投稿をきっかけに、SNS や YouTube で「キャンプブームの終焉」という話題を多く見かけます。
また、店舗では大きく値引きされたキャンプ用品も数多く見かけます。
実際にIR情報を確認すると、スノーピーク社(東証7816)の国内月別売上は2023年4月度で前年比63.3%まで急落、他の月も70〜90%程度で推移しています。
アウトドア用品の販売店「WILD-1」を展開するカンセキ社(東証9903)の決算短信にも「ファミリーキ ャンプ関連用品を中心に大幅に売上が落ち込んだ」と明記されています。
第1次キャンプブームでは最盛期の 1,580 万人(1996 年)から 705 万人(2008 年)と半分以下にまでキャンプ人口が減りました。今回もそうなってしまうのでしょうか?
確かに一部のキャンプ用品メーカーの売上が下がったことから、キャンプブームが終わったかのように見えるかもしれません。コロナ禍でライトユーザーの中には、キャンプから離れてしまった人が多くいます。しかし、コロナ明けでは、再び多くの人がキャンプに関心を持ち始めています。
私たちの最新のアンケート調査から得られた結果は、キャンプブームが終焉ではなく、新たな形で定着しつつあるという事実を明らかにしています。
キャンプ用品の売上低下は、ユーザーニーズの一巡に過ぎない可能性があります。これらの詳細について、この記事で詳しく解説します。
【調査概要】
調査対象 | 全国20~60代の男性、女性 合計1,100 人 |
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調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2023年 8月 1日~ 2023年 8月 5日 |
有効回答数 | 1,085 人 (~29歳:264人、30~45歳:585人、45歳~:236人) |
調査結果
調査結果概要
- コロナ禍では半数近いキャンプ経験者がキャンプを控えたが、逆にキャンプを始めた人もそれなりにいる
- コロナ禍では例年より多い新規層、ヘビーユーザーの増加、キャンプを控えてた人の継続購入でキャンプ用品の特需が起きてた
- コロナ明けでキャンプ用品の特需は無くなったが、キャンプ人口は大きく増えている
コロナ前のキャンプ人口の増加とアウトドアメーカーの売上増
キャンプ人口は2012年以降着実に伸び、2018年頃には第二次キャンプブームという声も聞こえ始めていました。
市場人口2018年 | スノーピーク 国内売上2017年 | WILD-1売上 | |
---|---|---|---|
2012年 | 720万人 | 23.9億* | 61.1億 |
2013年 | 750万人 | 29.3億 | 65.8億 |
2014年 | 780万人 | 37.3億 | 69.9億 |
2015年 | 810万人 | 57.9億 | 70.1億 |
2016年 | 830万人 | 73.2億 | 70.5億 |
2017年 | 840万人 | 77.5億 | 79.6億 |
2018年 | 850万人 | 98.2億 | 94.1億 |
※人口はオートキャンプ白書2023、売上はスノーピーク(東証7816)、カンセキ(東証9903)の決算資料より ※2012年スノーピーク売上は全地域売上(国外含む)のみだったため、2013年地域別売上比率(日本)からの推測値。
2012年から2018年の6年間で、キャンプ人口は720万人→850万人(+20.5%)と大きく増えましたが、それ以上にアウトドアメーカーの売上が伸びています。
同期間でスノーピーク社は毎年20%近い売上成長を続けで、2018年には2012年対比で4倍を超える売上になっています。WILD-1の売上も6年間に1.54倍とキャンプ人口以上の伸びです。
このことからキャンプ用品の種類の増加、単価アップなどにより、一人あたりの年間購入額が増えているのがわかります。
コロナ禍におけるキャンプ人口の変化とアウトドアメーカーの売上
2022年 | 2021年 | 2020年 | 2019年 | 2018年 | |
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市場人口 | 650万人 | 750万人 | 610万人 | 860万人 | 850万人 |
年間平均回数 | 5.4 | 4.9 | 4.6 | 4.4 | 3.7 |
年間平均泊数 | 7.2 | 6.2 | 6.1 | 5.8 | 5.5 |
年間泊数 | 20.7 | 20.4 | 16.3 | 17.5 | 16.6 |
スノーピーク売上 | 308億 | 257億 | 168億 | 143億 | 121億 |
WILD-1売上 | 120億 | 138億 | 136億 | 110億 | 94億 |
※オートキャンプ白書2023、スノーピーク(東証7816)、カンセキ(東証9903)の決算資料より
2020年にはコロナによってキャンプ人口は大きく減少します。しかし、アウトドアメーカーの売上はコロナ禍でも増え続けました。
また観光庁「旅行・観光消費動向調査」によるとキャンプサイト側の述べ宿泊人数は2020年こそ大きく減少しましたが、2022年には過去最高人数になっています。
2022年 | 2021年 | 2020年 | 2019年 | 2018年 |
---|---|---|---|---|
617万人 | 509万人 | 376万人 | 548万人 | 463万人 |
キャンプ市場人口は減っているのに、メーカーの売上が増え、キャンプサイトの宿泊人数は増えているのはなぜでしょうか。
仮説として、コロナ禍で
- キャンプを止めた・控えた経験者が多くいるが、一方で新たに始めた人も多くいる
- 継続ユーザーはヘビーユーザー化やソロキャンプなどスタイルの多様化が進んだ
を立て、アンケートを実施しました。
コロナ禍によるキャンプ控え

コロナ前(2019年以前)と比較して、コロナ禍(2020〜2022年)におけるキャンプの頻度には明確な変化が見られました。
コロナ禍では49.2%ものキャンプ経験者がキャンプに行くことを止めていました。また回数を減らした人も10.1%いました。
一方、コロナ禍でキャンプ未経験から始めた人が11.5%おり、回数が増えた人も8.7%いました。
特に、年に5回以上キャンプに行くようなヘビーユーザーは9人から39人(+333.3%)と大きく増えています。
コロナ禍 | |||||
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年0回 | 年0〜1回 | 年2〜4回 | 年5回以上 | ||
コ ロナ前 | 年0回 | 244 | 60 | 31 | 6 |
年0〜1回 | 290 | 112 | 56 | 6 | |
年2〜4回 | 115 | 73 | 45 | 11 | |
年5回以上 | 9 | 5 | 7 | 16 |
2019年のキャンプ人口860万人から推測すると、コロナ禍で430万人もの人がキャンプを止めましたが、98.9万人もの人が新たにキャンプを始めたことになります。
コロナ明けのキャンプ解禁

コロナ明け | |||||
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年0回 | 年0〜1回 | 年2〜4回 | 年5回以上 | ||
コロナ禍 | 年0回 | 46 | 468 | 135 | 12 |
年0〜1回 | 4 | 83 | 153 | 13 | |
年2〜4回 | 1 | 11 | 91 | 37 | |
年5回以上 | 0 | 0 | 9 | 30 |
また、コロナ禍とコロナ明けのキャンプの頻度を比較すると、コロナ禍でキャンプを止めていた人の多くが、再開したいと考えていることがわかりました。
さらに、コロナ禍でキャンプを始めた人もコロナ明けで止める人は少なく、さらに回数を増やすなど引き続きキャンプを楽しみたいと考えています。
コロナ明けのキャンプに行きたい回数を見る、ライトユーザーからヘビーユーザーまで、幅広い層でキャンプに対する関心が再燃していることがわかります。
これらの結果から、キャンプブームがコロナ明けで終わったわけではなく、新たな形で進行中であることが明らかになりました。
コロナによるキャンプ用品の売上げについて
コロナ禍とコロナ明けでキャンプ用品の購入に変化があったのかアンケートを取りました。

コロナ禍では60%近くの人がキャンプに行くのを控えました。しかし、キャンプ自体に行くことは控えてもキャンプ用品は継続購入している人が多くいました。
また、コロナをきっかけに新たにキャンプに行くようになった人や、経験者もヘビーユーザー化やソロキャンプなど楽しみ方の多様化が進み、新セットを購入した人が33.3%と数多くいました。
しかし、コロナ禍の3年間でそのような特別な需要も一巡し、コロナ明けでは新セットの購入は大きく減っています。
コロナで控えていた人の再開需要もあるため、購買人数としては増えていますが、新セット購入者が減ったことで購買総額としては減った形です。
また、キャンプには行くが、昨今のキャンプ用品の値上がりへの躊躇と、コロナで行けなかった他のレジャーにお金使いたいため、キャンプ用品の購入を控えるという意見もありました。
さらに、例年どおり、子どもの成長によりキャンプを止める層に加え、コロナをきっかけにキャンプを始めた人の一定数(22.2%、全体の6.0%)は、コロナ明けでキャンプを止めたことも判明しました。この結果、中古市場には通常より多くの商品が販売されていると思われます。
コロナ禍で新セットを購入した人のコメント (一部抜粋)
- コロナ禍で家族でキャンプデビューをしたので、初めは必要な物品も多かったし、楽しいので色々と買った。【30代男性】
- コロナ禍に仕事を辞めキャンプに行く頻度がかなり増え、元々持っていた道具を一式買い換えた。【20代女性】
- コロナが流行るくらいの時に、子供も大きくなりファミリーキャンプについてこなくなってきたので、キャンプスタイルをソロキャンプに切り替えて、キャンプ道具を買い替えました。【40代男性】
コロナ禍でキャンプを控えてもキャンプ用品を購入していた人のコメント (一部抜粋)
- コロナ前に家族でキャンプに行った時に良い思い出が作れたため、コロナ禍でキャンプに行く機会は減ったが、チマチマと前のキャンプに足りなかった物(焚き火台や斧など)を買い集めていました。【30代女性】
- コロナ渦ではキャンプを止めていました。ただ、コロナが空けたらキャンプをまた行いたいと考えていたので、気になるキャンプ用品があれば購入しました。【30代男性】
- コロナ禍に入り、キャンプに行く頻度は減りましたが、公園や海などアウトドアに行くためにテントを買ったり、キャリアカーを買ったりとキャンプ用品を変わらずに購入していました。【30代女性】
コロナ明けでキャンプ用品の購入額を減らしたい人のコメント (一部抜粋)
- 値上がりが止まらないので、キャンプ以外のレジャ ーも楽しむためには出費を抑えないとやっていけません。【30代女性】
- 今まで抑えていた外出や買い物、キャンプ以外のレジャーに時間を取るようになり、あえてキャンプを行うモチベーションが減った。【60代男性】
- キャンプ用品も値上がりで買うのを躊躇っています。他のレジャーや子供の教育にもお金がかかるので、なるべくお金を使いたくない【30代女性】
- コロナ明けでは、他のレジャーや旅行にもお金を使いたいとは思います。キャンプ用品は一式揃っているので、購入額は減りそうです。【30代女性】
コロナ明けでキャンプを止めた人のコメント (一部抜粋)
- こどもの年齢もあがったことなど、家族のレジャーの趣向が変わってしまった。【40代女性】
- ソロキャンプを始めて、テント、タープなどを買ったが今年になってからは飽きてしまい行っていません。飽きてしまった理由は、一人では熱が続かなかった。【20代男性】
- キャンプ後の片付け等が非常に面倒だったのでコロナ明けではキャンプに行くのを辞めてしまいました。ただグランピングはとても良いなぁと思っているので今後も継続したい。【20代男性】
まとめ
コロナ禍を背景に、新たにキャンプを始めた人や、キャンプのスタイルを変更して用品を買い替えたり追加したりした人が増え、キャンプ用品の売上は急増しました。
ところが、コロナ禍が終息に向かう中、これらの動きが一巡し、キャンプ市場にも大きな変化が見られます。
新品のキャンプ用品の購入動向は減少傾向にある一方、中古品の販売は増加しています。さらに、コロナ禍の特需期間中に、メーカーや販売店が過度な供給をしてしまったため、現在の市場では需要と供給のバランスが崩れています。
しかし、この現状は一時的なものと考えられます。キャンプを楽しむ人口は依然として増加傾向にあり、市場には確実な需要が存在します。
市場の調整が進めば、このバランスの乱れも次第に修正されるでしょう。今後の市場の動向に注目したいところです。